自社の風土を活かすシステムは,IT業者に頼んでも作れない

 システムを開発する際に,「何に焦点を当ててシステムを作るのか」「どの程度の範囲のシステムを作るのか」を決める必要がある。

「何に焦点を当ててシステムを作るのか」は視点である。何らかの管理システムを作る際に,売上・仕入・原価・利益などの金額に焦点を当てるだけではなく,作業や労力の時間に焦点を当てることも,モノの製造をした過程や在庫の数量に焦点を当てることもある。

  ただし,これらの金額・時間・数量は,企業の経営と密接に関連している。金額のうち,原価だけ計算する範囲に絞ったシステムを開発する場合でも,製造に費やした労働時間の集計や,在庫の金額や数量も関係することだろう。このように,システムを開発する際には,視点だけではなく,「どの程度の範囲のシステムを作るのか」の視野も決める必要がある。

 しかも,その視点・視野に加えて,「だれがシステムを開発するのか」という視座も重要になる。

 「把握できない実体」図をご覧いただきたい。「モノの実体」は,立体の三角錐である。しかも,モノの内部には,実体の三角錐とは異なる角度の三角錐が入っている。この「モノの実体」を外部の異なる場所(視座)から見ている人が左右に2人いる。

 この2人には,モノの内部にある三角錐を中心に「モノの実体」を捉えてもらっている。「モノの実体」の内部にある三角錐は,左の視座Aから見ている人には●に見え,右の視座Bから見ている人には▼に見えている。

 さらに,その内部にある三角錐だけではなく,その周りの状況も把握してもらっている。左の視座Aから見ている人には,「モノの実体」が▼に見える位置にいる。しかし,「モノの実体」が大き過ぎて,全体の形を把握できず,台形に見えるようだ。一方,右の視座Bから見ている人には,「モノの実体」が●に見える位置にいる。しかし,「モノの実体」が大き過ぎて,全体の形を把握できず,小さな●に見えるようだ。

 「モノの実体」の内部にある三角錐は,視点を表している。また,「モノの実体」である三角錐が大き過ぎて,全体の形を把握できず,台形や小さな●に見える範囲が,視野を表している。このように,視点・視野・視座の違いで,把握できるモノは人により異なることがわかる。しかも,どのような視点・視野・視座から見た平面的なモノは,立体的な「モノの実体」とも異なるのだ。

 自社の風土(歴史,組織,社員)が「モノの実体」であり,実体の外部にいるIT業者の視座から見た視点と視野で作られたシステムが,自社の風土を活かすシステムには成り得ない。自社の風土に適合させようとすれば,お金と時間が掛かり続けることになる。が,掛けても永遠に完成しない。

 もちろん,実体の内部にいる社員の視座から見た視点と視野で作られたシステムも,簡単には,自社の風土を活かすシステムには成り得ない。しかし,システムの開発能力も身につけながら,徐々に自社の風土に適合させて,システムを成長し続けることができる。時間は掛かるが,お金は掛からない。それに,社内にシステムの維持・拡張ができるIT人材が育成される。

 視点・視野・視座の違いで,把握できるモノは人によって異なり,実体とも異なる。したがって,自社の風土(歴史,組織,社員)を活かすシステムは自分で作り続けるべきなのである。


 

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